
クマと遭遇した際の適切な対処方法
「クマと遭遇した際の適切な対処方法」
近年、クマによる人身被害の報道を目にする機会が増えています。しかし、クマと遭遇した場合でも、適切な対応を取ることで、クマによる攻撃の損傷を最小限に抑えることが可能です。
本記事では、科学的根拠に基づいたクマとの遭遇時における正しい対処法も含めご紹介いたします。
【クマは通常むやみに人を攻撃しない】
一般にクマは「恐怖の象徴」として描かれがちですが、実際には不要な争いを避ける性質を持つ動物です。
クマは「恐怖」や「危機感」、「痛み」あるいは「不快感」を感じない限り、人間に対して積極的に攻撃を加えることはありません。人の姿を目にすると、むしろ自ら距離を取る傾向があります。
クマが攻撃行動をとるのは、主に自分や子グマを守るための防衛的行動です。したがって、私たち人間は、クマに対して恐怖や不安を与えない行動を心がける必要があります。

【クマに遭遇した際、避けるべき行動】
以下のような行動は、クマに恐怖や不安を抱かせる可能性があり、攻撃を誘発する恐れがあります。
- 大声を出す
- 急な動作をする
- 手を振るなど大きな身振りをする
- 石を投げたり棒で攻撃する
- 大きな音を立てる
- クマの目を凝視し続ける
- 所持品(リュックサック等)を取り返そうとする
【クマと遭遇した場合に推奨される行動】
冷静に、かつ慎重に以下のような行動を取ることが推奨されます。
- 静かに、ゆっくりとクマから距離を取る
- 木や岩などの遮蔽物を自分とクマとの間に置き、身を隠す(体全体が隠れなくても可)
- 市街地でクマを見かけた場合は、車内や建物内に避難する
- 至近距離で遭遇した場合は、速やかに「防御姿勢」をとる
★うつ伏せになり、両腕・手で頭部や首筋を保護する
(足を伸ばした状態、または胎児のように丸まった姿勢)

【科学的に有効性が確認された「防御姿勢」】
秋田県の医師グループの調査によると、「防御姿勢」の有効性が科学的に確認されています。
2023年度、秋田県内では62件のクマによる人身事故が発生し、計70名が事故に遭遇しました。そのうち7名が「うつ伏せの防御姿勢」を取っており、この7名に重傷者は確認されていません。
また、NPO法人ツキノワグマ研究所の米田一彦所長によれば、「クマは人間の頭部や顔を攻撃する傾向があり、立ったまま攻撃を受けることが最も危険である」との見解が示されています。
【最後に】
クマを目撃した際は、驚いて慌ててしまうかもしれません。しかし、落ち着いて対応することが自らの命を守る第一歩となります。
日頃から正しい対処法を理解し、万が一の遭遇に備えて行動をシミュレーションしておくことが大切です。いざという時に冷静に行動できるよう、心構えを持っておきましょう。
◆補足
ツキノワグマとヒグマでは対応が異なるという意見もあります。
けれども、東京農業大学の山﨑晃司教授は、野生生物保全論研究会(JWCS)のラジオ第12回「九州のクマは絶滅してしまったの?」(2022年7月13日)にて、両者の行動は非常によく似ており、対応方法に大きな違いはないとお話しされていました。
参考文献
米倉昭仁「 クマの猛攻撃『うつぶせ』防御に驚きのエビデンス! 医師が証言『首や顔面に致命傷は一人もいない』」dmenuニュース(最終閲覧日:2025年7月21日)。
https://topics.smt.docomo.ne.jp/article/dot/life/dot-260980
「クマによる防御姿勢は有効か? ―秋田県令和5年度データの解析」プレス発表資料 秋田大学 chrome-extension://efaidnbmnnnibpcajpcglclefindmkaj/https://www.akita-u.ac.jp/honbu/event/img/mix4910_01_dl.pdf