
傷病野生動物を見つけたときは
人為的な要因により、野生動物の負傷が増加している現代において、一般の人々が弱ったり負傷したりしている野生動物を見つける機会も増えています。そのため、一般の人が傷病野生動物を保護するケースも度々見かけるようになりました。
しかし、野生動物の救護は、イヌやネコなどの家畜と呼ばれている動物たちとは異なる特性を持っています。その特性を理解、考慮せずに、イヌやネコの保護と同じ考え方やアプローチで野生動物を扱うことや軽い気持ちで野生動物を救護することは、後にさまざまな問題を引き起こし、結果として保護された野生動物が深刻な苦しみを経験することになります。したがって、野生動物の保護は誰にでも簡単にできるものではありません。また、野生動物の救護はリリースが大前提であり、飼育目的での保護は 行わないでください。
野生動物の場合、「救護が必要な時」と「そうでない時」が存在します。一般の方が野生動物の救護が必要かどうかを判断するのは難しく、誤認保護のケースも少なくありません。そのため、救護が必要かどうかを判断する際には、必ず獣医師に相談することを強くおすすめします。
【傷病野生動物を見つけたときの対処】
- まず管轄の自治体に連絡すること(都道府県)
- 急いで動物を連れて帰らないこと
■各都道府県の野生動物救護の方針に従い行動してください。
■誤認保護を防ぐために、救護が必要かどうかの判断を獣医師に受けます。行政が獣医師を紹介してくれる場合もありますが、そうでない場合は自分で協力してくれる獣医師を探してください。
【誤認保護を防ぐためにできること】
野生動物は体調が悪いと、安全な場所でじっとして数日間体を休めることがあります。体調が回復すると再び活動を始めることがあるため、弱っていると思われる野生動物を見つけても、急いで連れ帰るのではなく、半日から1日以上様子を見守ることが重要です。例えば、若いシカが身を潜めて3日ほど休んだ後、元気に山へ戻った事例や、疲れている若いシカが民家の庭で数時間休んだ後に山へ戻った事例があります。
もし弱っている動物が道路際ではなく、人目や外敵から見つかりにくい安全な場所にいたなら、数時間ごとに様子を見に行きます。その間に、行政や獣医師と相談します。また、観察中に弱っている動物の側に飲み水を置くのも良いでしょう。
【見つけた野生動物が子どもの場合】
子どもの動物の救護判断は特に難しく、慎重になる必要があります。母親がいない子どもは、負傷の状態によって救護が急がれることがありますが、母親がいる場合はむやみに子どもを連れ去らないことが賢明です。母親の存在を確認するために、子どもを見える範囲から24時間以上観察します。シカの場合、母親によって24時間子どものもとに訪れないこともあるため、緊急でない限り2日間以上観察を続けることが望ましいです。
もし母親が絶対にいないと判断された場合は、状態に応じて保護が必要な時もありますが、母親がいる場合は、保護は必ずしも必要でない場合があります。母親がいるのに子どもを連れ去ると、母親は子どもを何日も探し続け、子どもは母親から離れることで不安や恐怖を感じ、体調が悪化する恐れがあります。したがって、子どもの保護は非常に慎重に行う必要があり、母子の利益を考慮した行動が求められます。
【見つけた野生動物の傷が酷く治療困難な場合】
救護が必要で治療可能かどうかの判断を現場で獣医師に行ってもらい、治療が困難な場合には、その場での安楽死を検討する必要もあります。その場での安楽死の処置が出来ない場合は、動物病院でその処置を行うことになります。安楽死の判断が必要な理由は、治療困難な状態の野生動物や完治が不可能な野生動物に無理に治療を試みることで、本人が大変な苦しみを経験することになるからです。
【まとめ】
野生動物の救護はリリースが前提であり、救護については、必要な場合とそうでない場合があります。傷病野生動物を見つけた場合は、まず管轄の自治体に連絡して、各都道府県の方針に従い行動してください。野生動物の救護の必要性の判断は一般の方には難しく、誤認保護を防ぐ為に、獣医師や野生動物の専門家に保護の判断を仰ぐようにしてください。傷病野生動物を発見しても急いで連れ帰らず、動物の状態に応じては、自然環境下で半日から数日の観察を続けることも必要です。