自然環境を理解するということー他国の声から考えるー

2025年12月02日

「自然環境を理解するということ

ー他の国の声から考えるー」



環境省は2025年10月末時点で、クマによる死亡事故を12件と公表(*1)しています。

事故件数の増加に伴い、2025年は報道でもSNSでも「クマ問題」が頻繁に語られ、その言説は次第に「クマ擁護派」と「クマを殺せ・絶滅させろ」と主張する過激派という二極構造を生んでいます。

集英社オンライン記事によると、「『クマを殺すな』などの擁護派による問い合わせは全体の4割程度で、残りの6割は『クマをいっぱい殺せ』などの過激派によるもの」だということです(*2)。 

「絶滅させろ」という言葉が日常的に発される状況は、自然環境への理解があまりにも乏しいことの表れでしょう。

国際的な調査でも、その傾向は示されています。米ピュー・リサーチ・センターが2021年に行った気候変動に関する意識調査では、日本は他国と比較して環境意識が低い結果となりました(*3)。

ドイツでは1970年代から環境教育が学校に組み込まれていますが、日本では自然環境に関する知識に触れる機会が限られ、日常の話題に上ることも少なく、関心が育ちにくい環境が指摘されています(*4)。この"知識基盤"の弱さが、極端な主張を生みやすい背景のひとつだと考えます。

そんな中で、TOKYO MXプラスが公開した「『野生動物との共存』外国人はどうみる?」(*5)というインタビュー記事(※引用部分は必要最小限にとどめます)は、非常に示唆的でした。

メキシコ、アルゼンチン、アメリカ、スペイン、ポーランド、フランス、オーストラリアの国の方々が登場しますが、かれらに共通していたのは「野生動物を含めた自然環境への関心の高さ」です。

それぞれが自国の野生動物政策や対策について理解し、自分の見解を語る姿は、日本ではあまり見られないものです。

一般の人が生態系について語り、野生動物を尊重する価値観を持つ。これは、単に"意識の違い"というレベルを超え、将来の自然環境のあり方そのものに差を生む要因になるでしょう。

日本では、子どもたちに対しても、人間側の都合に偏った自然保護観が教育の場に入り込むことがあります。

その結果、特定の動物種に対する偏見や差別、それらに基づいた動物たちにたいする暴力が幼い時期から形成されてしまう場面すらあります。

こうした現状を目の当たりにし、私は日本の野生動物を取り巻く問題に強い危機感を抱いています。

だからこそ、野生動物保護や自然環境保護の先進国が進めてきたように、「動物たちを含む自然環境への理解を深める教育」を本気で整える必要があります。

野生の動植物が織りなす自然環境があるからこそ、わたしたち人間も生きていける……というこのごく当たり前の事実を伝えることが欠かせません。

日本の中だけにいると、今の状況が「普通」に見えてしまいます。

しかし世界に目を向ければ、その"普通"は決して普遍ではありません。

他国の自然観に触れることで、日本の常識が必ずしも世界の常識ではないことに気づき、そこから自国のあり方を見つめ直す契機になるはずです。


参考文献

(*1)環境省「クマ類による人身被害について [速報値]」令和7年11月19日。

chromeextension://efaidnbmnnnibpcajpcglclefindmkaj/https://www.env.go.jp/nature/choju/effort/effort12/injury-qe.pdf

(*2)集英社オンライン編集部ニュース班「『クマさっさと絶滅させろ』"過激派"の電凸多数で役所は困惑『業務に支障をきたす』『共生目指す』しかし維新議員も参戦『管理できていないクマは全て駆除すべき』」集英社オンライン(最終閲覧日:2025年12月2日)。

https://shueisha.online/articles/-/255613?disp=paging&page=2

(*3)JAMES BELL , JACOB POUSHTER , MOIRA FAGAN ,CHRISTINE HUANG n Response to Climate Change, Citizens in Advanced Economies Are Willing To Alter How They Live and Work Pew Research Center (最終閲覧日:2025年12月2日)。

https://www.pewresearch.org/global/2021/09/14/in-response-to-climate-change-citizens-in-advanced-economies-are-willing-to-alter-how-they-live-and-work/

(*4) 二宮昌恵 「生活者意識とサステナブルな社会の実現」日本総研(最終閲覧日:2025年12月2日)。

https://www.jri.co.jp/page.jsp?id=106237

(*5)「『野生動物との共存』外国人はどう見る?」TOKYO MXプラス(最終閲覧日:2025年12月2日)。

https://s.mxtv.jp/tokyomxplus/mx/article/202511211000/detail/


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