
シカによる農業被害を防ぐには
シカによる農業被害は、適切な対策で防ぐことができます。
【シカ個体数と農業被害】
一般的に、シカを殺すことで、シカ個体数が減り、農業被害も減ると考えられています。しかし、北海道大学の揚妻教授の研究によれば、シカ個体数と農業被害は必ずしも比例関係にないことが明らかになっています
実際には、シカを駆除しても農作物への被害はあまり減少していないことが報告されています。被害金額は減少しているものの、これは取引価格や農業放棄による不申告などが影響している可能性があるとのことです。
【シカの個体数と空間の影響】
- シカを駆除すると、空いた空間に別の個体が流入することがあります。したがって、シカを殺しても農業被害は完全に解消されません。
- シカは生物の基本性質に従い、速やかに個体数を回復させようとします。その結果、個体数が維持または増加することもあります。
【シカから農作物を守るためには】
- シカによる農業被害が起こる前に、有効な対策を行う
- ステンレスなどワイヤーのメッシュフェンスを使用
- 柵の高さは最低2メートル50センチ
- 緩衝地帯(もしくは獣道)を残した小規模柵
- 農作物植え方の工夫、その他の工夫*¹
【柵のメンテナンスを減らすための工夫】
- 防除柵に使用する材料は、耐久性に優れた物を使用(例えば、メッシュフェンスのつなぎ目に、ステンレス製の線などを使う)
- 支柱は地面に垂直に深く打ち込む
*1【有効的なシカ対策の資料】
【地球で農作物を育てるということは】
地球には人間以外にも実にさまざまな生き物たちが生息しています。言い換えれば、地球は大きなシェアハウスです。地球で農作物を育てるということは、他の種による農業被害をゼロにすることはできないということです。しかし、野生動物による農業被害を防いだり、軽減したりする方法があります。わたしたち人間は、野生動物による農業被害対策ができるように、さまざまな工夫をし、状況に適した対策を柔軟に講じることが求められています。
農作物の栽培や人間が地球で生存できるのは、自然環境と自然動植物の相互関係によって構築されている生態にあり、自然環境とそこに棲む動物たちのおかげで成立っています。生き物たちを含めた自然環境を大切にし、自然環境と調和する人間活動を行っていきたいものです。
厄介物扱いされているシカたちも当然、生態系で重要な役割を果たしいます。からが山林を動き回ることで、草木やツタが払われ、地表に風や光や水が入ります。また、土の栄養を拡散させ、森林の最適化に寄与します。森林がシカたちにとって生活に困らない豊かな環境になれば、シカたちも危険を冒して人里へ下りてくることは減るでしょう。
【総括】
シカ対策の柵は、高さ最低2メートル以上にする必要です。柵は隙間なく設置し、使用する材料は耐久性にすぐれた金網などを主に使用し、金網のつなぎ部分にステンレス線などを使います。柵の設置範囲は、田畑のエリアのすぐ側に設置し、獣道や緩衝地帯を残すように、小規模に設置します。
農業被害対策に野生動物を捕殺するという安易な考えは、農業被害の軽減につながらないばかりか、自然生態系の保全に予期せぬ事態をもたらす可能性があります。自然環境の生態系を維持・回復に貢献している野生動物たちの捕殺は、自然環境破壊であるため、シカたちの生態や習性を理解し、適切な農業被害対策を講じることが重要です。適切な防除策の設置や自然環境のあり方を野生動物による農業被害を回避できる構造にすることで、シカによる被害を防ぐことができます。