野生動物に対する社会の認識

2021年11月04日

みなさんは野生動物をどのように思っていますか?

わたしは、感情や感覚、意思を持ち合わせている野生動物たちをとても尊く大切な存在だと思っています。

それぞれの種が個々に独自に生活をし、野生という非常に過酷な環境下でひとときのよろこびや安らぎを感じ暮らしています。

生を懸命に生きている個々の野生動物たちが直面している現状から言えることは、この社会は野生動物を歓迎しない傾向が強くある反面、わたしたちの利益のための利用には好意的であるということです。

現在、野生動物の生息地が人間活動により急速に失われ、野生動物たちの生活は困窮しています。その中、野生動物たちが人間や自然生態系に「害」を与えるといった理由から野生動物は殺戮され続けています。

そして、マスメディアや政府・行政は「野生動物は危険である」と「危険」ということを過剰発信しており、人びとに野生動物は大変危険という認識を植えつけることが連日行われています。

他方、希少動物種は保護対象となり、人間に「害」を与えない認識の種は捕殺を免れています。

「害」は農作物の損失が主に言われており、「様々な対策を実施してきたが被害が拡大傾向にある」とある自治体の鳥獣管理計画に書かれています。しかし、これは「対策がされていない」と言い換えることができます。通常、適切な対策では被害を防ぐことができます。適切な対策が行われていないので農作物の損失が減らないのです。

実際に田畑へ広範囲調査に行くと、効果ある柵の設置が行われていない箇所が多くありました。

・行政へ住民に柵のメンテナンス指導を行うよう要望しましたが、補助事業で行った柵は耐用年数が過ぎると指導は行っておらず、防除柵設置の補助申請に来た市民に口頭で説明するだけという、非常に非効率なことが行われているとわかりました。

さらにある行政の資料には、「様々な対策を実施してきたが被害が拡大傾向にある。積極的な捕獲が行われているが、年度により捕獲頭数の増減があるため、さらに捕獲の担い手確保に努力していく。捕獲頭数の増加には処理労力と費用が負担となるため、捕獲個体の利用を図る獣肉利活用施設の設置を推進する」と書かれており、この内容は野生動物の死体利用現実化を前提に書かれてあり、この市では野生動物屠殺場建設が決定しました。

野生動物の死体を利用を前提に捕殺者の確保をし、野生動物を殺害するということです。「被害」を多くしておけば無数の野生動物を殺害するには都合がよいのです。

真に農家の生活を考えるのであれば、自然環境や野生動物に配慮した科学的根拠に基づいた農作物の防除に力を入れる政策や自然の再野生化、農作物損失の補償などを政府や行政は行っているのではないでしょうか。

野生動物の「駆除」は人びとからの要望が強く、それに合わせるように政府や行政が「駆除」を積極的に促進しているため、一般の人たちもその思考が育ちます。農作物の損失を防ぐことや生態系保全を理由にこの殺戮を「よいことをしている」と認識されています。

感覚、感情、意識ある者たちへの殺戮を「よいこと」だと認識されていることが非常に大きな問題であり、今後の社会のあり方に影響を与えることでもあります。

そして、被害があるなし問わず、野生動物たちに憎悪の念を持ち、野生動物がいるだけで過剰な拒否反応を示されることが多くあります。

たとえば、イノシシが土を掘り返すことを「害」とすることやシカが歩いていると「害を及ぼす」「嫌だ」など言われることがあります。イノシシが土手などを掘りかえした場所は土を盛りなおせばいいのです。

イノシシやシカのこの行動は、動物が生きる為の行動であり「害」と言う行動ではありません。

野生動物の存在を非難する過激な行為は、野生動物への偏見や差別が根源であり、暴力に発展する脅威となるものです(実際に暴力が行われています)。

野生動物の存在自体の排除思考が際立つ現在社会の問題は深刻だと考えています。

このようなことから、社会の野生動物に対する認識は、野生動物は「資源」であり「害」を及ぼす生き物であるということです。厄介者で有効利用ができ、感覚や感情を持ち合わせていない都合のよいモノとして扱われています(人間以外の動物に感覚・感情が備わっていることは数々の研究で明らかになっています)。

そして、このような現状から危惧されることは、他者に対しての暴力の正当化が強固に構築されることで、この社会にますます暴力が膨張する可能性があるということです。

その結果、野生動物や人間も含めた他の動物たちの苦しみが増し平和とは程遠い社会になってしまいます。

そのような社会にしないためにも、わたしたちは暴力を行使することをやめ、すべての生き物との平和共存を目指し思考し行動しなければいけません。そのための教育が必要であると強く思います。

なお、生態系保全を理由とし野生動物の個体数管理が行われていることについては、このHPホームに書いてあるように野生動物の殺害自体が生態系を破壊する行為であるため、現在行っていることは生態系保護と真逆のことです。

山全体の自然林を伐採しスギを植林。野生動物たちは本来の生息地を奪われました。
山全体の自然林を伐採しスギを植林。野生動物たちは本来の生息地を奪われました。
防除効果がない柵の例(1)
防除効果がない柵の例(1)
防除効果がない柵の例(2)
防除効果がない柵の例(2)
防除効果がある柵の例
防除効果がある柵の例

文責 WDI代表 岡田友子