
図書の紹介
分野を問わず、読了した図書を紹介していきたいと思います
『外来種は本当に悪者か?- 新しい野生 THE NEW WILD』
著 フレッド・ピアス
訳 藤井留美
解説 岸由二
発行所 株式会社草思社
2016年7月20日第1刷発行
著者フレッド・ピアス̪̪氏は環境問題や科学、開発などをテーマに20年以上、85カ国を取材しています。
ピアス̪氏は人類が目指そうとする「生態系」について事実と科学的思考で語っており、本書は長年取材してきたピアス̪氏ならではの内容だと思いました。
この本は歴史的にみた「生態系保全」はどのような構造でどのような人間の思考構築により行われてきたのか詳しく書かれています。
これからを生きるわたしたちは新たな認識を具え新しい生態系を保全する意識が必要であることに気づかせてくれることと思います。
今ままでの常識がそうでない驚きとともに新たな知識構築に胸が高まる内容ですので、ぜひ、多くの方に読んでいただきたい一冊です。

『なぜわれわれは外来種を受け入れる必要があるのか』
著 クリス・D・トマス
訳 上原ゆうこ
発行所 株式会社原書房
2018年11月15日第1刷
人間活動が地球全土に及ぶ今日、「人間の時代」と言われており、現在、大型動物は減少し種の移動はかつてない速さとなっています。
その環境で生物たちは環境に適応する者、そうでない者がいます。人間が変えた生物多様性に乏しい環境に適応する種の中には「外来種」と言われる種もいます。
在来種と非在来種が織りなす環境は、従来の自然環境をみてきた人類にとって「異様」にみえるかもしれません。しかし、自然界はわたしたちが思い描く生態系とは異なる新たな生態系構築を進めています。
その新たな環境をわれわれ人間は受け入れ「新たな世界」について理解を深めなければいけないことがこの本には書かれています。
地球上の自然動植物の相互関係の決定はわれわれ人間が決定するのもではなく、環境と自然動植物が決定します。このことをわたしたちは理解していきたいものです。

『外来種のウソ・ホントを科学する』
著 ケン・トムソン
訳 屋代通子
発行所 築地書館株式会社
2017年3月3日初版発行
生物学者であるケン・トムソン氏が執筆した本書は、生物の歴史や生物の活動、そして生物にたいする人びとの思考の構築など書かれています。
生態系について新たな知識を得るには適した一冊となっています。
そして、そもそもの問い「在来種」「外来種」の区別にどのような意味があるのかを考えるきっかけになるのではないかと思います。
「在来種」と「外来種」にわけて地球生態系を語るのはもはや時代遅れであり、「在来種」と「外来種」を区別することは人間を排除主義、差別主義へとかりたてます。
この本を読んで生態系(自然環境)に関する正確な知識を身に着け平和的活動を行える種にわたしたちは変化してみませんか?

『動物の賢さがわかるほど人間は賢いのか』
著 フランス・ドゥ・ヴァール
訳 柴田裕之
発行所 株式会社紀伊國屋書店
2017年9月7日第1刷発行
霊長類の社会的知能研究の専門家であるフランス・ドゥ・ヴァール氏は数々の研究に参加しており、その研究内容は興味深いものばかりです。
本書には過去に人間が人ならぬ動物たちに行ってきた数々の実験の未熟さが書かれている一方で、動物たちのすばらしい能力を多く紹介してくれています。
「人間以外の生物は人間より劣っている」という言説がありますが、本書を通じてこの主張の誤りに気付くことができます。
さらに動物たちが具え持つ能力に胸が高鳴ると思います。
著者は「互恵・共感と思いやり」という「モラルの柱」について述べており、人間と動物に共通するものとして重視していています。
人間以外の動物たちへの偏見を捨て、動物たちが持ち具える能力に感嘆し、それらに向き合っていきたいものです。
この本を読むと、人ならぬ動物たちのすばらしい世界を身近に感じるかもしれません。